2026.8.19

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賛成率が下がった株主総会。経営への評価より先に見るのは「株主構成」

株主総会が終わり、経営トップ選任議案の賛成率が前年より下がったものの、どう受け止め、どう説明すべきか迷っていませんか。本記事では、上場企業の臨時報告書4,032件の集計に基づき、賛成率の調べ方と、市場別の分布での読み方を解説します。

結論

下がった賛成率は、経営への不信任を意味しません。賛成率を決めているのは、株主構成と、機関投資家が公表している議決権行使基準です。基準に会社の数値を当てはめた結果が、票に反映されます。これが、臨時報告書と運用機関の行使記録を読み切って得た結論です。

賛成率に「ここから悪い」という公式の基準はない

賛成率が何%を下回ったら問題か、という公式の基準はありませんでした。ガバナンス・コードが総会後の対応を求める「相当数の反対」に数値の定義はなく、線引きは各社の取締役会に委ねられています。

コードが求めているのは、判定ではなく総会後の仕事の中身です。反対の理由や、反対票が多くなった原因の分析を行い、適切に対応すること。この求めは2026年の改訂で「検討」から「対応」へと強化されました。なお、この原則の対象はプライムとスタンダードで、グロースはコードの基本原則だけが説明の対象です。

公式の基準がないなら、自社の数字は何と比べればよいのでしょうか。使えるのは、同じ市場区分の分布の中での位置です。

賛成率90%割れは、プライムでは3社に1社

下がったこと自体も、思われているほど珍しくありません。直近1年の臨時報告書を数えると、経営トップ選任議案の賛成率90%割れは、プライムでは3社に1社(28.7%)、スタンダードとグロースでは10社に1社ほどでした。「9割台後半が当たり前」という認識は、プライムではすでに実態と合わなくなっています。

もう一つ、下位1割の目安も算出できます。プライム81.6%・スタンダード89.74%・グロース91.0%です。自社の数字がこの水準を下回っていれば、同じ市場の中で下位1割に位置すると判断できます。

位置を測るには、物差しを揃える必要があります。報告書に印字された「賛成割合」は会社ごとに計算方法が違うため、そのままでは比べられません。臨時報告書には議案ごとに賛成・反対・棄権の議決権の数が載っており、この3つから賛成÷(賛成+反対+棄権)を計算すると、この集計と同じ物差しになります(集計側の条件は記事末に記載しています)。

なお、この分布で分かるのは、直近1年の中での位置までです。前年から下がってきているのかどうかは、自社の報告書の新旧を比較して確認する必要があります。

市場の差を作るのも、経営ではなく株主構成

90%割れの比率が市場間で3倍も違う理由も、経営の質ではなく株主構成にあります。プライムだけは、機関投資家系の名義が保有額の過半を占めており(外国法人等33.0%+信託銀行23.1%・2025年3月末)、その多くが、基準を公表してそのとおりに議決権を行使する株主です。

一方、グロースで最大の割合を占めるのは個人・その他(53.4%)です。個人は行使基準を公表しません。

基準に沿って議決権を行使する株主が多いほど、基準に抵触した会社の賛成率は下がります。市場による差の正体は、この株主構成の差です。自社の株主にこうした運用機関がどれだけいるかは、大量保有報告書と運用機関の個別開示から数えられます。

運用機関が本当に基準のとおりに議決権を行使しているかは、公開されている記録で確かめられます。たとえば三井住友トラストアセットマネジメントは、どの会社のどの議案に反対したかを理由付きで全件開示しており、直近の1四半期分を読むと、取締役選任(会社提案)への反対は1,188行ありました。

理由の欄に並んでいたのは、行使基準の項目名でした。社外取締役の独立性、親会社との関係——いずれも、事前に公表されている項目です。会社ごとに書かれた個別の文章や、経営への評価は、最後までありませんでした。

時間をかけて対話したのに反対された場合も、事情は同じです。行使の判断は面談の場で決まるのではなく、基準に会社の数値を当てはめて行われていました。経営への感情的な評価は、行使記録のどこにも書かれていませんでした。

票を入れる側は、賛成率を見ているのか

ここまでの読み方には、未検証の想定が一つ残っています。機関投資家も、会社の賛成率そのものを見ているのではないか、という想定です。実際に、20社分の行使基準を1,027行に分解して数えました。賛成率を条件にした行は、ゼロでした

制度にも数値の基準はなく、行使基準にも賛成率の項目はありませんでした。それでも、90%割れの比率には市場間で3倍を超える差がありました。この結果が示すのは、賛成率が、経営への支持の強さより先に、公表基準に従って反対票を投じる運用機関が株主構成にどれだけいるかを反映している、ということです。なお、賛成率は行使ベースの数字のため、正確には、議決権を行使した株主の中での構成が影響します。

基準への当てはめで決まる数字であれば、企業自身でも検証できます。どの運用機関のどの基準に抵触していたかは、基準が公開されている以上、自社の数値と突き合わせれば分かります。コードが総会後に求める「原因の分析と対応」の中身も、要するにこの突き合わせです。

下がった賛成率は、経営への評価点ではなく、基準との突き合わせの結果です。突き合わせで決まるのであれば、企業自身でも同じ突き合わせを行えます。行使基準は、誰でも読める場所に公開されています。

編集後記

もし明日の役員会で問われるなら、最初に開くのは自社の臨時報告書です。賛成・反対・棄権の3つの数から賛成率を計算し直し、市場の分布の中に位置づけます。それだけで、説明に必要な前提を整理できます。

そのうえで、4,032件を数え終えた立場から、意見を一つ述べます。下がった賛成率の報告は、頭を下げる場面ではなく、確かめる場面です。反対票は感情の表れではありません。だから次の総会までの仕事は、空気を読むことではなく、条文を読むことだと考えています。

出典とデータについて

本記事の賛成率は、2025年8月1日から2026年7月31日にEDINETへ提出された議決権行使結果の臨時報告書4,039件のうち、上場企業の4,032件をひふみ株式会社が集計したものです(EDINETのコンテンツは公共データ利用規約〔PDL1.0〕に準拠)。賛成率は賛成÷(賛成+反対+棄権)で計算し、経営トップは報告書の表紙の代表者と一致する取締役候補で特定しています。株主構成の数字は東証の投資部門別保有比率(2025年3月末・金額ベース)で、保有の構造であって行使行動の分解ではありません。

本記事の制作には生成AIを活用し、データの集計と出典はひふみ株式会社 デジタル編集部が確認しています。

制作: ひふみ株式会社 デジタル編集部

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