2026.8.19

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議決権行使基準の条文が反対票になるのは、施行の日とは限らない

運用機関から行使基準の改定の知らせが届き、来期の自社への影響を問われて、即答できずにいるのではないでしょうか。本記事では、主要運用機関20社の基準1,027行を照合し、自社に適用される改定を絞り込む手順を、適用対象と適用時期の実測から整理します。

結論

来期の自社に実際に適用される改定は、一覧の全部ではなく数本です。どれが適用されるかは、自社がTOPIX500の構成銘柄かどうかでほぼ決まります。ただし、改定された条文が反対票につながり始める時点は、施行日とは限りません。本記事では、基準の現行版と過去版、そして運用機関の行使記録を突き合わせて、順に確かめていきます。

効く改定は数本で、分かれ目はTOPIX500にある

改定の一覧は長くても、基準1,027行を構造化して数えると、適用日付きの予告を出しているのは20社中5社にとどまりました。

予告の中心は2027年4月です。柱は、ROE8%とPBR1倍を組み合わせる基準の導入で、対象はTOPIX500の構成銘柄から始まります。

同じ適用日でも、対象は同じではありません。役員の在任年数の基準を全上場企業へ広げる運用機関や、政策保有株式の基準を新設する運用機関もあり、これらはTOPIX500以外の企業にも適用されます。

議決権行使基準の改定予告の一覧
議決権行使基準の改定予告の一覧(クリックで原寸表示)

そして、予告を待たずに既に適用されている基準もあります。ROEとPBRを組み合わせた基準は現行版に既にあり、全上場企業を対象とする運用機関では、今年の行使記録で既に反対理由として使われていました。さらに、予告された基準は、総会時点から過去に遡った期の数値で判定する設計です。TOPIX500の構成銘柄では、現在進行中の期が既に判定の対象に入っています

行使基準の改定も結果も、締める方向だけではない

改定と聞くと、基準の厳格化を想像します。しかし原本を読むと、同じ改定文書の中で、基準を緩和する変更も行われています。三菱UFJ信託銀行の2026年4月改定は、ROE8%の予告を載せた同じ文書で、役員報酬枠への一律反対の基準を廃止しました。

反対の対象を絞る変更もあります。同じ改定は、業績・政策保有株式など3つの基準の反対対象を、代表取締役から「3期連続で取締役であった代表取締役」へ絞りました。財務指標の改善には期間が要る、というのが原本の説明です。剰余金に関する議案への判断を、一律の反対から個別の判断へ改めた運用機関もあります。

行使結果も一方向ではありません。同一企業について前年と比較できる1,230社では、業績基準による反対が実際に増えた一方、女性取締役の基準による反対は19社から10社へ半減しました。基準が変わらないまま、反対が減った項目もあるのです。

最大の反対理由が入ったのは2021年の改定だった

では、いま反対票につながっている基準は、いつ導入されたのでしょうか。大手1機関の今年の行使記録で、社数ベースで最大の反対理由になっていたのは、社外役員の独立性に関する基準でした(206社)。その中の「在任12年」という基準が導入されたのは、2021年12月の改定です。

導入の時点では、在任が長くても対話で合理的な説明が得られれば独立性を認める、という緩和の条項が付いていましたが、後の改定で削除されました(削除の時期は特定できていません)。

今年の記録では、この基準の例外適用は1.0%にとどまります。施行から数年を経て、この条文は最大の反対理由になりました。条文は施行されれば、いずれ反対票につながるように見えます。

気候変動基準は4年目に、例外適用の形で現れた

ところが、同じ2021年12月の改定で新設された気候変動の基準は、違う経路をたどっています。行使記録の理由欄に登場したのは今年が初めてで、反対は1社にとどまりました。一方、例外適用で賛成となった会社は8社あり、例外適用が中心の運用でした。

例外の適用率は、基準ごとに大きく違いました。独立性は1.0%でほぼ全数が反対に回り、業績は26.0%が賛成に転じ、気候変動は大半が例外適用で賛成に回りました。ただし気候変動は、反対の判断自体が対話を前提とする条文のため、分母の作り方が他の基準と違い、割合の横並び比較はできません。

同じ日に施行された二つの基準のうち、一方は最大の反対理由となり、もう一方は例外適用が中心でした。この違いを生んだのは、施行日ではありません。条文が反対票につながるのは、施行された時点ではなく、例外が適用されなくなった時点だと読めます

ただし、この仕組みが働くのは、「対話や説明を考慮して例外を認める」と条文に書かれた基準に限られます。書かれていない基準は、施行の時点から反対票につながります。

編集後記

改定の一覧が届いたら、確認する点は二つで足ります。一つは、自社がTOPIX500の構成銘柄かどうか。これで、自社に適用される改定がほぼ絞れます。もう一つは、どの期の数字で判定されるかです。構成銘柄でなくても、全上場企業に適用される改定はあります。

20社分の基準を照合して分かったのは、対応を始めるべき時期がもう来ていることでした。予告された基準は、過去の期を遡って測ります。改定への対応は、施行日を待つのではなく、現在進行中の期から始める必要があります。一覧は日付の順ではなく、自社に適用される順に読みます。いまはそう考えています。

出典とデータについて

本記事の改定・適用対象・適用日の記述は、主要運用機関20社の公表基準をひふみ株式会社が1,027行に構造化し、原本と照合したものです。行使記録の実測は、三井住友トラストアセットマネジメントの議決権行使結果の集計です。2026年4〜6月総会と前年同期との比較は、両期に共通する1,230社を対象としています。なお、1機関・1四半期の集計という限界があります。基準の導入年は同社の基準の過去版と改定リリースの二重照合によります(一部の版は現物未取得で、限界は本文に記載のとおりです)。

本記事の制作には生成AIを活用し、データの集計と出典はひふみ株式会社 デジタル編集部が確認しています。

制作: ひふみ株式会社 デジタル編集部

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